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2020年10月09日

<FAL/gFAL学生公募展示>『ディスタンシング・伝播箱 』

Exhibition

コロナによる混乱で様々なイベントや展示が中止になる中で、武蔵美でも残念ながら芸術祭が中止になりました。
油絵学科では学生たちに、このような状況の中でも積極的に制作や展示に関わって欲しいという思いから、2号館 FAL/gFAL での展示企画を募集し、

集まった企画内容を油絵学科専任教員が厳正に審査した結果、3企画の展示が決定いたしました。

ぜひご高覧ください。

 

ディスタンシング伝播箱

 

出展者:内田久美子佐藤優里奈鹿野結菜鈴木ファルクタ大、高橋幸正、高橋冴、田內泰生、寺崎茉白、中村夏野、吉田彩子

場所:FAL

期間:10月12日〜10月17日(初日は13:00から)

<注意事項>

新型コロナウィルス感染拡大防止のため、入構に際して、以下の注意事項をご確認ください。

ご来校前に検温してください。37.5度以上ある場合には入構できません。

マスクの着用をお願いします。

入構時に正門の守衛室で氏名・住所を記帳してください。(学外の方のみ)

入構後は所定の場所以外の立ち入りはご遠慮ください。(学外の方のみ)

 

 

今年度、初の試みであるFALgFAL学生企画公募。1回目は公示から企画書の締め切り日まで時間に余裕がなく、そんな中でも応募をしてくれた全ての企画は展示をすることが出来た。すぐにアイディアを出せるそのフットワークの軽さを評価したい。2回目である今回の募集者は、学部1年から院2まで全学年から17組のエントリーがあり、我々の予想を遥かに超える数であった。審査は公開で行い、企画者のプレゼンテーションを聞いた上で、袴田先生、諏訪先生とわたしが各応募者に対し10点満点で評価した。

わたしの採点基準としては、プレゼンテーションからイメージし、展示を行うレベルに達しているものへ8点を入れ、更に評価できるものは9点または10点とした。2回目の公募ということもあり、企画を練る時間もあったためか全体的にレベルが高く、それぞれの評価の差が見えなくなるほど拮抗していた。そのために、わたしの採点簿は8点以上が半数近くに達してしまった。学部4年生や院生になると、作品のクオリティーも上がり、明らかに充実した内容になることを確信できる企画が複数あり、どれも見てみたく甲乙付けられず、それらは9点にした。

今回唯一10点を出したのは、学部3年の内田久美子による発表で、企画名は「ディスタンシング・伝播箱」同じ学年10人による展覧会である。

企画内容も、現在COVID-19が収束しない状況下で、大学の授業もオンライン授業と対面授業が未だハイブリッドに行われていて、特に美術大学という制作した作品がどのように他者へ届くのかという表現の根本を問われている状況下、このグループは明快に「現実空間における新しい繋がり方を模索する。」と問いを投げかかる。また、この10人がこれまで作ってきた作品を見ても、絵画、インスタレーション、映像、パフォーマンスと様々で、美術に対する考え方も趣味性もバラバラであり、ひとつの場所でこの10人が展示をしたらどうなってしまうのだろうか?と想像がつかない故にむしろ期待が膨らむ顔ぶれである。しかし、企画イメージを見たら、FALの展示空間の中に薄い布で出来た箱状の物体を天井から吊るし、その中で伝言ゲームの要領で製作・展示を行うという。公開制作のようなものなのだろうか?このアイディアを聞いて、わたしは少し戸惑った、何故ならこれだけ異なる方向性を持って制作している人たちが1つの箱の中で、それも鑑賞者にとっては、作品が観づらい状態を作り、完成がいつ訪れるのかわからない状況をあえて作るのだから。どのようにこの10人がこのアイディアで納得したのかも想像できなかった。

内田のプレゼンの途中で、突然メンバーの吉田彩子が入り込んできて、内田の説明に突っ込みを入れる場面があった。まだアイディアがまとまっていないようなふたりのやりとりの様子を見て、審査している3人も思わず笑いが出てしまった。そのとき、わたしのためらいも吹っ飛び、10点を入れた。そう、この10人はそれぞれこの企画内容に異なる期待を抱いていて、普通に考えると自分のスタイルが実現できそうもない状況(細密画を描く高橋冴などは時間的に不可能)なのにも関わらず、各々何かに賭けていることがわかったからだ。

わたしもこのメンバーと一緒に賭け事をしたいと思い、最高点を入れることにした。

小林耕平