11月16日(木)に開催される河村正之氏による特別講義、
「内省の美―石仏の魅力とはー」のお知らせです。
この機会に是非ご参加下さい。
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講師:河村正之氏(画家)
開講期日:2023年11月16日(木) 17:00~
開講場所:1号館103講義室
講座企画者:水上泰財先生(油絵学科教授)
対象:全学科・全学年講義内容
「内省の美―石仏の魅力とはー」
河村正之氏は、私が画家として兄事する先輩であり、長きにわたりその作品を鑑賞してきた友人でもある。作風は、氏の趣味である登山から触発されたものなども多く、厳しく構成された幾何形態や煌びやかに彩色された植物群などは、俗世間とは一線を画したものである。美と醜であれば美、聖と俗であれば聖、生と死であれば死を連想させ、それらを追求し展開する、現代の美術状況においては貴重な存在だと思っていた。発表も個展を数年に1回か2回するだけなので、知る人ぞ知る作家であり、その寡黙でストイックな制作姿勢においても一目置く存在なのである。
ところが近年、氏は小ペン画ギャラリーと称して小さなペン画をSNSなどでも発表し、驚くことに近々詩集も出版するのである。私に言わせれば、覚悟を決めて山から地上に降り、俗世間との距離を一気に縮めはじめたようにしか思えないのだ。なぜかは、分からない。でも、そのペン画は、肩肘張らない自由気ままな作品が多く、中でも石仏から発想を得たものが、愛嬌があり、私は好きなのである。
IT以降、現在のAI(人工知能)から対話型AIなどが自明の風景となりつつある日本あるいは世界において「石仏」などといったローカルで小さな存在が、若い芸術家にとっての表現のヒントになるかどうかは分からない。しかしながら、そこには少なくとも各々の出自からなる歴史性・世界観に通底するささやかな回路がひっそりと横たわっているのかもしれない。否むしろ、より鳥瞰的=普遍的な視座を獲得できるのは、そうしたアナクロニズムとも見なされかねない、当たり前のように昔からそこにあって、ひっそりと目立たない存在からなのではないかと思ったりするのである。
この講座では、画家河村正之氏の仕事を紹介するとともに、近年興味を持ち始めたと言う内省の美―「石仏」【私が勝手に、自分がお地蔵様に自然に手を合わせる姿を思い浮かべながら、それは内省の美なのではないかと思ったのだ(笑)】の魅力について大いに語っていただきたいと思っている。
油絵学科教授 水上泰財
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・河村正之氏
画家
1955 山口県防府市に生まれる
1980 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
1986 同大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻修了
1987 『メッセージのゆらぎ』により東京芸術大学 より学位取得(学術博士)
1996 東京学芸大学 教育学部 美術科 助教授(2004教授)
2011 同大学 早期退職
現在 東京都あきる野市在住 個展・グループ展を中心に発表 無所属
著書 『メッセージのゆらぎ』 (論文+作品集 1987年 私家版)
『山書散策 埋もれた山の名著を発掘する』 (2001年 東京新聞出版局)
『水晶録』(作品集 2011年 私家版)
『水晶録Ⅱ』(作品集 2011年 私家版)
『月虹と游色-河村正之詩歌集』(2023年 私家版)
個展を中心とした主な発表歴
1983 個展 銀座スルガ台画廊/東京・銀座(1984,1994)
1983 個展 紀伊國屋画廊/東京・新宿(1987)
1988 個展 パレット画廊/山口・周南(以後10回)
1990 個展 ぎゃらりいセンターポイント/東京・銀座
1990 個展 ギャラリーなつか/東京・銀座
1994 個展 あかね画廊/東京・銀座(以後6回)
1996 個展 横浜ガレリア ベリーニの丘ギャラリー/神奈川・横浜
2000 個展 防府市市民交流センター・アスピラート/山口・防府
2017 個展 数寄和/東京・西荻窪(2019,2020,2023)
2019 個展 SALIOT GALLERY/東京・田町
ほか、個展・グループ展等多数